基調講演 『女性に伝えたい 未来が変わる働き方』

講師:淑徳大学教授・ジャーナリスト 野村 浩子氏

基調講演には元日経WOMAN編集長で現・淑徳大学教授、ジャーナリストである野村浩子氏をお迎えし「女性に伝えたい 未来が変わる働き方」というテーマで、これから人生100年時代、キャリアを築いていく上で、とても重要なメッセージをたくさん頂きました。

 

この基調講演は導入部分と本編3部から構成されました。

導入:世界の中で見る日本の女性活躍推進の現状

 1:職場を変える鍵は「対話力」

 2:多様な働き方は社員に「自立」を求める

 3:人生100年時代の複線的キャリア

野村氏ご自身の体験に加え、膨大な取材データに基づくメッセージは圧倒的な納得感を参加者に与えていました。

 

PART0 世界の中で見る日本の女性活躍推進の現状

 

・現ビジネスヨーロッパ会長は4年前40代後半で就任した女性で、日本の経団連会長に40代の女性が立てる日はいつになるのだろうか

 

• ヨーロッパの企業役員が適切な男女バランス(少なくとも男女40%ずつ占める)を実現するために40年以上かかるという危機感から、ノルウェーのように数が満たせなければ上場廃止とまではせずとも、EUでは『役員に空席ができたら、次の候補を男女半々とし情報公開をすること』『情報公開をしない企業については、各国で制裁措置を定める(公共調達の対象から外す、補助金や助成金を打ち切る)』といったクォータ制度をEU全体で導入しようと議論し、ようやく女性比率23%に改善することができた。日本においてはこのままでは役員比率の改善に100年を要し、対策不足の意味で世界から遅れをとっている現状がある。

 

PART1 職場を変える鍵は「対話力」

 

• 1つ目のカギは個々人により異なる働き方ニーズを上司部下で共有すること。

マミートラックから抜け出すには「~してくれない」と座して待っていても会社にわかってはもらえない。家族上司との対話を!

 

• 2つ目のカギは、無意識のバイヤスに気付くこと。

男女格差を生む4つの要因は・採用、・経験・評価・昇進がある。採用と昇進はその基準は見える化しやすいが経験や評価は見える化しにくい。スイスのビジネススクールIMDギンカ・トーゲル氏によれば男性は要求水準の60%を満たしていれば手を上げるが女性は100%でないと手を上げない。日本の女性は130%満たしていないと挑戦しないと言っている。女性の側から「もっと出来る」と挑戦しよう。挑戦するために必要な「自信」は小さな成功体験の積み重ねが大切

 

• 3つ目のカギである働き方改革5つのポイント、

1)仕事を「見える化」して、情報を共有すること。

2)達成目標を明確にしてコミットメントすること。

3)簡潔に業務を報告するルールをつくること。

4)安心して相談できる、信頼できるチームをつくること。

5)場所を超えたコミュニケーションを可能にするICT環境を活用すること

…といった以上5つを意識したコミュニケーション改革の実践が必要である。

 

PART2 多様な働き方は社員に「自立」を求める

• 『働き方改革の本丸』とは、まず組織側が仕事の『量』と『質』をコントロールし生産性を上げることに本気になる

• 売上を落とさず利益を上げるには付加価値の高い仕事をするか、過剰品質を見直し“神対応”をやめる勇気を持つ企業になることも必要

• 社員側は時間をかけてカバーするという発想を捨て、『生産性』とは何をもって評価するかを上司と確認し、退社後の時間の使い方も含め(家事のアウトソーシングなども自己投資と考える)、自らの価値と時間当たりのアウトプットを高めることである

 

PART3 人生100年時代の複線的キャリア

• 『LIFE SHIFT 100年時代の人生戦略』(リンダ・グラットン、アンドリュースコット著)を読むと、世界は長寿化し、100年ライフを生きる時代になる。もう、これまでの「終身雇用時代のキャリア」は通用しない

• 会社の外に安心できる場をもち、「想い」や「知」を「シェア」できるネットワークを築く

• 本業(専門知識)だけでない強み「パラレル(キャリア)」を持つ

• 分岐点で柔軟かつ能動的に「キャリアシフト」できるよう、日ごろから社内外に自分の知識・智慧・強みをオープンにすることが将来への布石になる。

 

すべての話題が経験や調査に裏付けられており、圧倒的な説得力は会場中を魅了しました。人事やダイバーシティ推進のご担当者、また今後のキャリアや働き方を考えたいという方々が120名ほどご出席くださり、「社内改革を早急に進めようと決意した」「明日からの働き方を変えたい」「職場の仲間や友人にこの話を伝え、少しずつ輪を広げる」など未来を変える声をたくさん頂戴しました。

 

基調講演アンケート(抜粋)

 

「取材に基づいたお話でとても面白くうかがいました。」

 

「とても勉強になりました。普段、あまり気にしないでいたことへの興味がわき、自分が問題意識を持っていることへのヒントなども含まれていて、日本と日本の女性への意識など考えるいい機会になりました。」

 

「現時点での思いに対する考えをあと押ししてもらえる内容が有り大変有意義な内容でした。自分がロールモデルとなれるよう、ひきつづき精進するべきことの参考になりました。ありがとうございました。」

 

「 自社でも”働き方”を変えていかなくてはならない中、ヒントをたくさんいただくことができました。100年生きることの出来る時代の中で、自分の強みを認識し戦略立てて伸ばすことの重要性を改めて認識しました。」

 

「女性の社会進出が問題視されていますが、今回基調講演に参加させて頂き現状の日本の様子を深く学ぶことが出来ました。私は地方金融機関に勤務していますが、地方では男女の格差はさらにあります。男性、女性それぞれの今の意識を少しずつ変え女性の活躍を進めていければいいなと感じました。そして自分自身も頑張っていきたいなと思います。」

 

「野村さんのお話はグローバルから日本を見られていて、認識の幅が広がりました。」

 

基調講演終了後、100名近くの名刺交換希望者全員

に笑顔で応じる野村さん♡

野村浩子氏 プロフィール

お茶の水女子大学文教育学部卒業

 

95年「日経WOMAN」編集部に移り副編集長 

03年1月から編集長

06年12月 日本初の女性リーダー向け雑誌

「日経EW」編集長に就任

07年9月 日本経済新聞社、編集委員

12年4月「日経マネー」副編集長

14年4月~淑徳大学人文学部表現学科長・教授

研究分野は、編集の技法、メディアとジェンダージャーナリズム、女性の就業支援、 女性リーダー、ワークスタイルの変化、ダイバーシティ推進など

 

財政制度等審議会委員、日本ユネスコ国内委員会委員など各種委員も務める。

 

著書

「女性に伝えたい 未来が変わる働き方」(KADOKAWA刊)

「働く女性の24時間」(日本経済新聞社刊)

「定年が見えてきた女性たちへ」(WAVE出版)など